政府は12日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を請求する方針を決めた。
岸田文雄首相としては、自民党との密接な関係が明らかになった教団との「決別」をアピールし、政権運営への影響を最小限にとどめたい考えだ。
首相は12日、首相官邸で記者団に「客観的な事実が明らかになったことから、文部科学相として判断したものだ」と述べた。
文化庁による7回の質問権行使などを通じ、政府は「行為の組織性、悪質性、継続性」を確認できたと判断。
解散で実態把握が難しくなるとの指摘もあるが、政府高官は「何度も質問を重ねて事実を積み上げてきた。ここに至ったのは首相の決断だ」と強調した。
首相には、年内も取り沙汰される衆院解散への足かせを取り除きたいとの狙いもある。昨年7月の安倍晋三元首相銃撃事件を発端に、自民議員が国政選挙で教団側から派遣された運動員の支援を受けていたことなどが発覚した。
首相の衆院解散戦略を左右する22日投開票の衆参補欠選挙を控え、教団と深くつながってきたイメージを払拭したいとの思惑も見え隠れする。党関係者は「衆院解散に向けた環境整備の一環だろう」と指摘した。
自民と教団の関係が再びクローズアップされる可能性もある。党内からは「教団が新たな自民党との関係を暴露するのではないか」(参院幹部)と危惧する声も漏れる。
政府関係者は「首相はリスク覚悟だ。解散請求にちゅうちょしたと思われたくないのだろう」と推し量った。
野党は、20日召集の臨時国会で教団問題を取り上げ、争点化を図る構えだ。立憲民主党、日本維新の会は、賠償に充てる資金の隠匿や散逸を防ぐための議員立法をそれぞれ提出する方針。
立民の泉健太代表は12日、「与党も協議に応じてほしい」と求めた。維新の馬場伸幸代表も11日の講演で「世論がこの法案を動かす」と訴えた。
与党幹部は「技術的に難しい。教団の解散も決まっていないのに財産権は侵害できない」と野党の動きをけん制する。
ただ、首相周辺は「臨時国会で争点になると、弱腰だと批判されかねない」と警戒感を示す。首相は12日、記者団に「注視したい」と述べるにとどめた。
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