こんにちはkarisumaです。
まずはこれを
これぞ勉強不足のバカライター。
コア視聴率はしっかりとってる。
じゃないと第二弾あるわけない。 https://t.co/6a9mBZYWqi— 松本人志 (@matsu_bouzu) June 15, 2021
勉強不足のバカライター”というパワーワードからして、ご立腹の様子が見てとれる。
松本さんレベルの人ならば、自分の影響力がいかに大きいかを当然わかっている。「バカライター」という汚い言葉を口にすれば、たちまち騒ぎになることも承知の上だ。
それでも一石を投じたかったのだろう。その話題とは何か?「テレビ番組の視聴率に関する報道」についてである。
上記のツイートは、8日に放送されたバラエティ番組『千鳥の相席食堂 ゴールデンSP』(ABCテレビ)の視聴率が低かったというネットニュースに対する反論だ。その記事は、同番組の視聴率が5.8%で苦戦したことを強調する内容だった。
これだけ見ると、多くの人が「そこまで目くじら立てること?」と思われるかもしれない。視聴率が高いだの低いだのというニュースはこれまでも散々報じられてきた。では、なぜ天下の松本人志がわざわざ苦言を呈したのか?それは、記者が扱った視聴率が、今のテレビ界ではほとんど使われていない「世帯視聴率」だったからである。
実は松本さんはバカライター発言をする直前にも、ある報道に噛みついていた。自身が出演した番組の世帯視聴率が6.8%と報じられたことについて、こうツイートしたのだ。
補足。
コア視聴率が良かったんです。
コア視聴率はスポンサー的にも局的にも世帯視聴率より今や重要な指標なんです。そのコア視聴率が3時間横並びでトップやんたんです。だから。低視聴率みたいなミスリードは番組を観てくれた皆さん。後輩達に申し訳ない気がします。— 松本人志 (@matsu_bouzu) June 14, 2021
テレビ業界人じゃない人は、このへんで理解できなくなるだろう。コア視聴率?世帯視聴率?同じ視聴率じゃないの?
と。そこで、今の視聴率事情をしっかりとわかっていただきたい。そうすれば、松本さんがなぜつぶやいたのかがよく理解できる。そして、その向こう側には、テレビの本当の危機が見えてくる。
まず、これまで視聴率として報じられてきたのは「世帯視聴率」だ。”世帯”という言葉通り、何軒の家が見ていたかを表している。
つまり、10軒中2軒の家が見ていれば、その番組の世帯視聴率は20%ということだ。しかし、これはあくまで世帯の話で、10人家族だろうが3人家族だろうが同じ扱い。
10人家族の中で1人が見ようが、3人家族が3人で見ようが、同じ「1世帯」としてカウントされる。見ている人の年齢も関係なかった。
個人視聴率が導入され、テレビ局は大きく変わった。個人それぞれの年齢がわかるため、広告主としてはターゲットを絞りやすくなったからだ。簡単に言えば、レースのルールが変わったのだ。
世帯視聴率を獲得するには、テレビをよく見る60歳以上の高齢層が楽しめる番組を作ればよかった。
だが、高齢層は購買意欲が低いため、スポンサーがつきにくかった。そこで、個人視聴率になってからは、各局が購買意欲の高い40代以下に向けた番組を制作するように方針転換した。高齢層向けと若年層向けでは内容がまるで違うのは言うまでもない。
コア視聴率
コア視聴率とは、各局が独自に設定したターゲット層に対する視聴率を指す。
たとえば、松本さんが言及した『キングオブコントの会』を放送したTBSでは、4〜49歳の個人視聴率が「コア視聴率」に該当する。
ちなみに、日本テレビやフジテレビは13〜49歳だ。今や、ほぼ全てのテレビ局がこの「コア視聴率」を目標にしている。もはや世帯視聴率を見ていない局もあるほどだ。最近、お笑いのネタ番組やコント番組が増えたり、ジャニーズや坂道グループのアイドルが多く出演しているのはこの影響だ。
つまり、松本さんはこう言いたかったのではないか。レースのルールが変わったのに、新聞社などが今も世帯視聴率を報じて、さも低調に終わったかのように印象付けるのは違う、と。
ゴールデンタイムのバラエティで世帯視聴率6.8%は、かつての基準では不合格だ上記の通り、高齢層向けと若年層向けでは作りが全く違う。
今の番組は若年層向けに作っているのだから、世帯視聴率が低くなるのは当然。
今の若者のテレビ離れ
NHK放送文化研究所が行っている世論調査「国民生活時間調査」で、若者のテレビ離れがさらに進行したことが明らかになった。
1日に15分以上テレビを見る人の割合が、10〜20代で激減。中でも、男性20代と女性10代では50%を切った。テレビ離れは深刻だ。正直、もう取り返しのつかないところまで来ているかもしれない。
2010年代に入り、広告収入が減少しつつあった各局は、世帯視聴率を獲得するために高齢層にうける番組を乱立させた。
その結果、ゴールデンタイムからアニメが消え、コント番組が消え、ドラマは医療と刑事モノばかりになり、子供が楽しめる番組が減っていった。
そこにテレビの本当の危機がある。「テレビは楽しい」という原体験がない子供たちが大人になった時、果たしてテレビに期待してくれるだろうか?彼らが就職する時、テレビ局で働きたいと思うだろうか?優秀な人材が入ってこなければ、業界は確実に廃れる。
ちなみに、マイナビの2021年版就職人気企業ランキングでトップ100に入ったテレビ局はNHKのみ。
やはり黒船は強い
Netflixなどの有料動画サービスの利用は急増した。アニメもドラマも、広告なしで一気に見られる。続きを見るのに1週間も待たなければならなかったり、好きな時間に好きな場所で見られなかったり、いいところで関係のない広告を見せられることはない。
テレビを凌駕する制作費で作られたコンテンツは品質も高い。正直、テレビが勝てる要素が見つけられない。
Netflixは会員の課金によって成り立っている。
ユーザーを楽しませれば儲かり、新たなコンテンツに投資できる。だからアダルトビデオ業界を題材にした『全裸監督』のような攻めた作品が作れる。
一方、テレビ局は広告収入がメインだ。そのビジネスモデルでは、スポンサーのつきやすい番組をやるしかない。だから『全裸監督』は作れない。テレビ局はもはや、誰のために番組を作っているのだろうか?広告に依存し続ける限り、このねじれは続く。
テレビはつまらなくなったと言われるが、今もテレビ局は国内トップクラスのコンテンツメーカーだ。その強みを活かすべく、広告ビジネスから早く抜け出して、IPや有料コンテンツ、新規事業の開発にたくさんのリソースを割くべきだ。
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