盛山文部科学相が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令を東京地裁に請求した13日。
教団との関係を知るキーマンとされる細田衆院議長の記者会見が議長公邸で開かれた。
「特別な関係はない」
「一切問題はない」
初めて肉声で説明する機会だったが、細田氏は淡々と言葉少なに語るのみで、教団との関係の全体像が示されることはなかった。
細田氏は昨年、過去に教団の関連団体の会合に8回出席していたことなどを文書で公表したが、公の場での説明を避けていた。教団は、細田氏が2021年まで率いた自民党最大派閥の細田派(現安倍派)と特に関係が深かったとされる。保守的な考えが近いとみなされたためだ。
「何でもやってくれた」
自民と教団の接点は、安倍派の源流を作った岸信介・元首相まで遡る。教団が1968年に反共を掲げて設立した「国際勝共連合」を岸氏ら保守派が支援。教団は選挙を介して自民に接近し、90年代には既に深く入り込んでいた。
「『タマネギ部隊』が今回もきてくれた」
自民の古株の女性秘書はかつて、選挙事務所で教団のボランティアがそう呼ばれて重宝されていたことを覚えている。
「何でもやってくれたので、どんな料理にも使えるタマネギに例えられていた」という。
選挙では、ポスター貼りやはがきの宛名書き、支持を呼びかける「電話作戦」など、「人手はいくらあっても足りない」。
教団は、最初は地域住民や教団の名前が付かない関連団体の関係者として議員や秘書に接触。見返りを求めない選挙支援で実績を作ってから、次第に教団や関連団体の会合出席や祝電などを求める手法をとってきた。
活動を自民の「お墨付き」とアピールするための戦略だ。
選挙でのボランティア支援を受けていたことを公表した萩生田政調会長は「結果として教団の信用を高めることに寄与してしまったとの指摘を真摯に受け止め、猛省しなくてはならない」と振り返っている。
教団側の思惑とは別に、自民内では「そもそも党の政策に影響を与える存在ではなかった」との声が根強い。
教団の信者数は公称60万人で、衆院1小選挙区当たりで見ると約2000人と当選を左右できる規模にない。自民幹部は「一方的に支援を受ける関係だと考える議員が多く、脇が甘かった面は否めない」と自戒する。
「腹いせに」接点暴露の可能性も
昨年7月、安倍晋三・元首相を銃撃して殺害したとして逮捕された山上徹也被告(43)(殺人罪などで起訴)が、「母親が教団に多額の献金をして恨みがあった。安倍氏と教団がつながりがあると思って狙った」などと供述し、自民議員と教団との関係がクローズアップされた。
世論の反発が高まり、岸田内閣は揺れ動いた。岸田首相は2022年8月の内閣改造で、教団との関係を公に認めた閣僚7人を交代させ、説明を二転三転させた山際大志郎・元経済再生相を事実上更迭。
内閣支持率は、同11月には発足以降最低の36%まで落ち込んだ。
自民も、教団と接点を持った党所属国会議員の調査結果を公表。同10月には党のガバナンスコード(統治指針)を改定し、「不当な政治的影響力を受けると誤解される行動について厳に慎む」と明記した。
それでも、今年9月に第2次岸田再改造内閣が発足すると、閣僚や副大臣、政務官の過去の接点に再び注目が集まった。
政府には、解散命令請求に踏み切ることで教団に対する毅然(きぜん)とした姿勢を強調し、政権の体力を奪う負の連鎖を断ち切りたいとの思惑がある。
ただ、教団と全面対決する判断に、教団からの反発を危惧する声も出ている。自民ベテランは「教団側が腹いせに、これまで公になっていない接点を暴露し始める可能性もある」と指摘する。
政治と教団との関係に一定のけじめはつけた。だが、世論の理解が得られるかどうか、先行きは見通せない。
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