銀行間の送金を担う全国銀行データ通信システム(全銀システム)の障害は、連休明けかつ、代金決済が集中する「5・10日(ごとおび)」に起きた。一部取引は10日中に決済処理が済まず、個人や企業の取引に影響を与えかねない。金融機関は改めて決済網を担う重責を痛感する必要がある。
障害は、10日朝に日中取引が始まるタイミングで発生した。ほかの金融機関との資金のやり取り(送金)をつなぐ全銀システムが11の金融機関で正常に起動しなかった。
全銀システムには1000を超える金融機関が参加しており、1営業日の取引は約806万件、約14兆円(2022年度実績)に上る。現時点で、影響のあった取引件数は少なくとも約140万件に上った。
システムを運営する全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)によると、日中に処理できなかった取引は、別のシステムを通じて10日中にできるだけ決済処理するという。
ただ、未処理の取引を全て把握できておらず、障害のあった通常システムで受け付けた取引の一部が残る可能性もあるという。各金融機関は、二重の振り込みにならないよう注意を呼びかけている。
全銀システムは稼働した1973年以来、半世紀にわたって取引に影響を与える障害はなかった。今回は、3連休中にシステム更新した14の金融機関のうち11機関で障害が起きた。大量の決済処理を担う装置産業ともいわれる金融界にとって最も警戒するシステム更新のタイミングで発生した形だ。
タイミングも痛手だ。毎月の「5・10日」は、企業の代金決済などが集中する。東京都内のりそな銀行の店舗を訪れた自営業の男性(67)は、「取引先が他行から送ったお金の入金が確認できなかった。決済手段がなくなって、企業活動が停滞しかねない」と戸惑っていた。
代金の未払いや返済の未履行と判断されれば、企業や個人の信頼をも傷つけかねない。
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